「無職転生 異世界行ったら本気だす」がとても面白かった。

先日最終回を迎えた「無職転生 異世界行ったら本気だす」を全話見終えた。

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画像は”TVアニメ 「無職転生 異世界行ったら本気だす」公式サイト”より引用。

毎週の楽しみであり、Netflixで毎話再生すると、24分はこんなにも短かったか?と思えるくらいに時間を忘れて見終えてしまう。そんなアニメだった。

アニメはとても上質な絵作りで、光の質感や影の描写が上手く、数秒映される何気ない風景や街の描写に魅入ってしまったり、昨今の作品ならセリフや説明で描写してしまうところをきちんと主人公ルディに実感として体験させたり、美少年の中身である転生前のニートおじさんの捻くれた性格を丁寧に丁寧に描き続けたりと、個人的に好きなポイントが多かった為、こんなにも楽しみに見れたのだと思う。

この作品は転生後、赤ん坊から時は流れいきなり15歳、とはならない。赤ん坊から立って歩けるようになり、言葉と文字を覚え、魔法と剣に触れ。。。と、愚直に丁寧に、ルディの一生を描くんだという作品の意志が感じられた。

 

生前、自分は正しいことをしたのに、その報いとして耐えられない程の痛みを負わされ、外へ出られなくなってしまった主人公。

異世界に転生したことで、少しずつ外の世界に触れて、沢山の関わりを作り、困難に打ち勝っていく様を見て、じんわりと胸が温かくなった。良かったなぁルディと、彼の心を思うと泣きそうになる。

 

転生モノは、転生する際にチート級の能力やスキルを与えられることが多いが、その中でも無職転生はかなり特殊なように思う。

彼が得た特殊なスキルは、赤ん坊の時から大人の思考回路を持ち合わせたことと、時々無意識(雲の中のような世界)の中に現れる神様から助言のようなものをもらえること(するべきことのみ教えられ、その結果どうなる等は教えてもらえない)。

ルディは幼少期から、ファンタジー世界にはその世界なりのルールがあること、そのルールに則って正しく努力(とはいえ普通の人なら幼少期から正しく努力できるわけがないので、その点がチートか)することで魔力や魔法は格段に強くなること等を発見し、メキメキと力を増やす。

ニートだったとはいえ、曲がりなりにも大人であるから、クレバーな発想で多くの困難を解決していく。

しかし面白い(不謹慎だが)のは、幼少期から培った魔力や魔法も、クレバーな発想も、何一つ直接の解決には結びつかない程の大きなトラブルや災害に見舞われるところだと思う。

だからこそ、今自分にできることは何か、できることの中で何が最善なのか、未熟なりに、常に考えながら行動していた。

絶対に負けない主人公も、常にカッコよくヒロインを救うヒーローも好きだが、僕は泣きべそをかいたり、たまに捻くれたり、仲間と主張が合わない!と喧嘩したりするルディが本当に好きなのかもしれない。

 

ルディは物語の大部分を3人パーティで過ごし、最後はそれぞれの道へと分かれていく。

物語の終盤で、自分は何も成し遂げられなかったと塞ぎ込んでしまうルディと、ルディと旅をした経験のおかげで前を向ける仲間や、笑顔でいられる仲間の描写を交互に見せるのは流石にズルいと思った。涙腺が緩んでしまった。

 

ルディがどれだけ異世界で身体的に成長しようと、生前の記憶も、メンタルも変えられない。だからこそ、内側と向き合って、もう一度自分から立ち上がって、歩き出す描写が必要だったんだと思う。その一番大切な回、最終回を♯23「目覚め、一歩、」というサブタイトルで締める素晴らしさに震えてしまった。

強制的に始まった旅により、途方もない距離を歩いてきたルディだが、そばにはルイジェルドとエリスという仲間がいた。しかし、最終話では、一人ぼっちで歩いていく。

テントから出るたった一歩の描写は、ルディと生前の外へ出られない男の姿が重なり、彼の本当の旅がここから始まるんだという予感に、胸の奥が高鳴った。

自分で決めて立ち上がり、自分で選んだ一歩。

これからも続いていくからこそのサブタイトルの「一歩、」なのだと思う。

 

優しくて、合理的で、だけど個人的な気持ちも優先してしまう時もある。そんな人間臭いルディの冒険が、最後は幸せなモノであってほしいと思わずにはいられない。

2期が待ち遠しい。