鬼滅の刃二話を見た。
今回の第二話は炭治郎の人の良さと心の強さ、だからこその未熟さが存分に描かれつつも、炭治郎を支える周りの人たちの優しさが垣間見える素晴らしい回だったと思う。
Aパート
まず、小銭を払う払わないの問答から始まるのがめちゃくちゃいい。
第一話はサブタイトルである『残酷』通りのもので、ドシリアスだった。身を切られるような心の痛みと絶望があった。だからこそ僕は炭治郎に感情移入し、応援したくなった。しかし、息が詰まるような時間が2クールも続くと流石に窒息してしまう。だからこそフッと笑ってしまう『コミカルな導入』は鬼滅の刃にとても重要なのだと思う。そして禰豆子が可愛い。小さくなれ~の時の禰豆子がくっそ可愛い。
しかし、ひと時の笑顔と暖かさに身を任せていると、血の匂いが匂ってくる。ここで「鬼が人を傷ついている!」ではなく「この山道だから誰かが怪我をしたんだ!」になるところに炭治郎の優しさが見えるのが良い。しかし、扉を開けると咀嚼音、血まみれの死体、そして鬼(CV:緑川光)。
コミカルからシリアスへの流動がお見事。鬼の有り得ない生命力に気持ち悪さと滑稽さを感じつつ、戦いは進む。
Bパート
戦いの顛末はあっけなく、鬼は日光で消滅した。
炭治郎は鬼にとどめを刺すために心を鬼にできなかった。鱗滝の「妹が人を喰ったらどうする?」という問いに答えられなかった。鱗滝は炭治郎の全てに「判断が遅い」と言い放ちビンタするが、「甘さは捨てろ」とは一言も言わない。ここがめちゃくちゃ良い。
甘さ(=優しさ)は弱さであるけれど、捨てるのではなく背負って進め。妹が人を喰った時は妹を切り自分の腹を切れ。厳しい言葉と態度とビンタは、「それだけは絶対にあってはならない」という言葉に繋がっていく。
しかし、世の中はそんな理想が通用するほど優しくないことは炭治郎も視聴者も第一話で痛感している。だからこそ、それでも「理想と優しさを背負え」と言う鱗滝さんの優しさと厳しさは温かく沁みるのだと思う。
見ず知らずの仏さんを埋葬する心、合わせる手(僕らからは見えないが)から、鱗滝さんも炭治郎と同じ清廉な心を持っていることが分かるこの数秒のカットがめちゃくちゃ良い。この描写があることで、上の言葉や行動に説得力と暖かさが付加されていると思う。
そして始まる鱗滝さんの試練…の前にいきなり繰り出してくる炭治郎と禰豆子の一瞬の過去。
辛抱という言葉で炭治郎は禰豆子に想いを馳せるが、視聴者に鬼になって呻き声以外何もしゃべれなくなった禰豆子の『人間』をいきなり突き付けてくるのがズルい。禰豆子を鬼に変えたヤツに怒りしか湧かないし、涙を流す炭治郎で胸が苦しくなる。
いや、家族を殺されて冨岡義勇とバトって禰豆子を背負って山登って、鬼と戦って妹担いで全力疾走している炭治郎だってめちゃくちゃ『辛さを抱えている』わけで、でも禰豆子を治したい気持ちに『必死』だから気づいていないだけで、そういうのに僕は胸が苦しくなるのだと思う。
そして今度こそ始まる鱗滝さんの試練。いやーもうとにかく作画とカメラワークがヤヴァイ。丸太や竹がこんなに怖いと思ったことがあるだろうか。というかそもそも木や竹が生き生きと襲い掛かってくるのマジ?!?!?!?という気持ち。
絵本のような分かりやすさ。劇場版のアニメのような躍動感。罠の匂いを嗅ぎ分ける炭治郎の描写。この3つが一気に押し寄せる神レベルの作画は、バトルにおける良いところなしだった炭治郎の反撃の狼煙のようで、テレビの前でおもわずガッツポーズしてしまった。ufotableは力の入れどころ、抜きどころをよく分かっている。信頼の塊である。
そしてまたしても唐突に挟まれる冨岡義勇の『人間』み溢れる手紙。ボロボロになりながらも自身の才覚を提示した炭治郎。清々しいほどの鱗滝さんの「お前を…認める」。なんなんだこいつら。冨岡義勇、炭治郎の兄貴じゃん。鱗滝左近次、親父じゃん。家族を亡くした炭治郎に血は繋がっていなくても心で繋がる家族が出来たの、まじで良すぎる。涙が止まらん。
炭治郎と禰豆子が負った身体的、精神的な深い傷を抱きしめ、信念と才覚を認め、ビンタと布団を差し出す鱗滝左近次が最高に魅力的な回だった。
そして、今思うと第二話サブタイトル「育手 鱗滝左近次」は100点のチョイスだと思わずにはいられない。鬼を殺す技(=生きる術)を炭治郎に教える人がこの人で良かったなぁ。
やっぱこのアニメ、面白すぎる。
今回の二話で一番好きなカット。
禰豆子に布団をかけるその手が、僕は大好きだ。