鬼滅の刃三話を見た。
家族を喰われた"被害者"は"鬼殺しの資質"を師へ示し、"被害者"から"鬼殺しの刃"へ、奪われる側から奪う側へと己を鍛造する。師に殴られ(呼吸法)、自ら頭を打ちつけ(岩が切れず)、兄弟子にボコられる中で少しずつ不純物が抜け研ぎ澄まされていく姿は、見ていて胸が熱くなった。
Aパート
鬼殺隊と鬼の説明を鱗滝さん(芳忠さん)が語っていたが、原作を読んだ時は全く予想もしていなかった。修行シーンは炭治郎の未熟さも相まってコミカルな雰囲気が多いが、芳忠さんのドシリアスな語りを初手に持ってくるため話自体がピリッと締まる。これがめちゃくちゃ良い。
昼と夜が巡るように、鬼滅の刃は暖かい優しさと血なまぐさい戦いが何度も展開される。今回の三話は修行のため安心して見ていられる(と言っても修行内容は1歩間違えば大怪我するものだ)が、修行の先に"何"が待っているのか、どれだけ困難なのかを印象付けるベストタイミングだと思った。
また、全体的な雰囲気はコミカルだが、時折炭治郎が見せる目を覚まさない禰豆子への不安と、強くなるため、生き残るために今するべきことをガムシャラに頑張れる清々しさが彼の中で渦巻いているのがとても良い。
妹を鬼に変化させられ、家族は殺され、何をすればいいのか、どこを目指せばいいのか分からなかった炭治郎にとって、鱗滝さんの課題は肉体的にも精神的にも有難いものなんだと思う。
出口の見えない暗闇の中で、確実に一歩一歩強くなっていく実感が、無茶苦茶な修行内容にも体当たりのようにぶつかっていける要因なのだろう。
その勢いのまま、どんどんと鱗滝さんの教えをこなしていく炭治郎の成長は目覚ましく、最初は避けるだけだった短剣の罠も自前の刀で撃ち落とせるまでになり、何もかも順調に思えた。
しかし、ここで鱗滝さんの最終課題である「大岩」が切れないという壁にぶち当たる。
鱗滝さんの最終課題に炭治郎は珍しく挫けそうになる。当たり前といえば当たり前だが、自分の体以上の大岩を切れ、なんて課題は無茶を通り越して不可能だ。
そんな時、不意に現れた狐面の少年(CV:梶裕貴)が、炭治郎に立ちふさがる。
Bパート
この作品の剣士たちは、どうも内に秘めている想いを撒き散らし(心の声なり、叫び声なり)ながら刃を振るう。この『くどさ』を感じるほどの説明口調がめちゃくちゃ好きだ。
鬼滅の刃は剣士も鬼も、優しさ、殺意、食欲、私怨、信念、悔しさなど、爪や刃に想いを込めて殺し合う。血なまぐさい戦いの中で、想いと想いのぶつかり合いが見えるのがこの『鬼滅の刃』なのだと思う。
特に、今回のサブタイトル二人の内の一人、炭治郎の前に立ちはだかる少年『錆兎』はその特徴が顕著だ。熱い想いを叫びながらも、剣技は洗練された美しさ、流麗さがあった。このギャップがたまらねえ。
錆兎は流石鱗滝一派というか、不器用な優しさが垣間見える。いや、本当に不器用だよこの一派。
お前は何も身に着けていない。何も自分のものにしていない!一年半もの間、何をやっていた…!!!
⇒『だから俺が呼吸法の練習相手になってやるよ。お前の"超えるべき壁"になってやる。だからかかってこい。頑張れ。』
⇒不器用な優しさああああああああああああああ!!!!!!!!!!さびとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!好きだ!!!!!!!!!!!!!!
錆兎との戦いも、最初は一方的にやられるだけだったが、徐々に戦士のやり合いになっていく描写がとても丁寧で良いし、やっぱりufotableの描く『達人同士の戦い』は見ていて手に汗握る。作画カロリーが高すぎる。最高。
錆兎にコテンパンにされ、自分の悪いところを理解し、真菰という第三者の目で無駄な動きを矯正し、また挑む。まさに、炭治郎という『鬼滅の刃』の鍛造だ。
そうした密度濃い半年を過ごした炭治郎を相手に、錆兎は木刀から真剣へと持ち替える。
やっと男の顔になったな。
それは、錆兎が炭治郎を認めた瞬間。
錆兎と真菰との時間が、鱗滝さんの教えた全ての極意が炭治郎の血肉に、骨の髄に、沁み込んだ瞬間。
だから斬れる。
錆兎という兄弟子のお面であり、鱗滝さんの最終試練であり、本当の意味での『鬼殺の資格』の証明である大岩を真っ二つにできる。
斬った先にあった、錆兎の嬉しくも寂しさが見える表情が100億点だ。
かくして、炭治郎の修行はこれにて幕引き。
この先に待つ『鬼殺隊入隊試験』、数々の鬼との死合いに想いを馳せつつ三話の感想を終わろうと思う。
やっぱ鬼滅の刃とかいうアニメ、めちゃくちゃ面白い…。真菰ちゃんと禰豆子が可愛すぎてどうにかなっちまいそうだ…
今回の三話で一番好きなカット。
錆兎、炭治郎に本気でぶつかってくれてありがとうな。錆兎との時間は、これからも炭治郎の中で生き続けるよ。