皆さまこんにちは。
前回のブログでは、千歌の家族や幼馴染の発言から千歌の過去を妄想しました。
今回は、物語を通して立ちはだかる困難に対し、千歌がどのように考え、行動し、成長していったのか。その軌跡を妄想してみたいと思います。
書きたいことを勢いのままに書いてしまっているので割と長いです。そのため、鍵となるエピソード毎に区切って書いていきます。
さて、ベタなことを書きますが、今の自分を作るのは過去の時間。未来の自分を作るのは今の時間です。千歌は困難にぶつかる度に立ち止まり、悩み、自分なりの答えを出してきました。私はこの『悩むこと』と『答えを出すこと』がとても重要だと考えています。
千歌が現状を打破しようと悩み、出した『答え』。千歌が一人で出した答えの多くは正しいものではありません。だからこそAqoursの皆が千歌に言葉をかけ、行動を起こし、千歌の軌道を修正します。
それはあの9人でなければ踏み出せない一歩で、その一歩が積み重なっていくことで千歌の未来は形作られていくはずです。
千歌の未来を考えるために、まずは彼女の歩みをしっかりと見ていきたいのです。
千歌ちゃんの物語に私なりの敬意と愛情を持って、紐解いていきたいと思います。
とは言っても千歌についての切り口は色々とあります。そのため、内容がブレないようにひとつ軸となるテーマを決めて、それを中心に見ていきます。
そのテーマは、ブログのタイトル通り
『千歌とリーダー』について。
このテーマを選んだ理由は超個人的なものです。
私は"一応"リーダーの高海千歌!
ちかっちって呼んでね!
高海千歌役伊波杏樹さんの挨拶の一文にある、千歌の"一応"を否定したかったんです。
千歌ちゃんはちゃんと、Aqoursのリーダーだよ。
私はライブやニコ生の度にそう思っていました。「面倒くさい奴だなコイツ。こじらせオタクか?」なんて思う方もいらっしゃるかもしれませんが、私は大真面目にそんなこと考えているんです。
なので、今回はこのテーマで語りたいと思います。
※注意
あくまで私の妄想です。こうだったら個人的にエモいなぁという見方をしています。そこの所に留意して、読んでいただければ幸いです。
…さて、前置きはこれくらいにして。
それでは行きましょう。
リーダーに必要なこと
リーダーに必要なことは沢山あります。本屋にはリーダーシップに関する本が沢山並び、テレビにはドキュメンタリー番組として凄腕のリーダー達が特集されています。そんな中でリーダーをやったことがない私が自分なりのリーダー論で話をするのは説得力がありません。
というわけで、アニメ内でなにかリーダーシップについて明言しているものはないか探してみました。
鞠莉の横の張り紙に注目してください。
細かい字は分かりませんが、読める範囲で抜き出してみました。
リーダーに必要なこと
-
自信
-
責任感
-
決断性
-
活動性
-
社交性
#11「浦の星女学院」で、しいたけがゲートを壊した後のワンシーンです。
おあつらえ向きにみかん色で書かれている事ですし、この5つについて千歌が持っているもの、いないもの、手に入れたものを照らし合わせていきます。
活動性
東京にμ'sとの違いを探しに行ったり、学校説明会への突破口を探し続けたり。千歌は自分が動くことで未来をちょっとずつ変えてきました。千歌の活動性は確かに存在しています。
社交性
Aqoursの前進の力となった『悔しさ』を与えてくれた『0の結果』とSaint Snow。「諦めた方がいいかもしれません」という厳しい言葉をかけた聖良と、千歌はいつのまにか電話でやり取りするほどの関係になっていました。千歌の社交性は他のメンバーも思わず驚いてしまうほどです。
千歌はリーダーに必要な5つのうち、2つは持っていることが分かります。
では残り3つはどうでしょうか。
各エピソードを通して見ていきましょう。
#3『虹』から分かること
千歌はラブライブ予備予選と学校説明会のどちらも出場する手段を探し、みかんを運搬するためのモノレールを見つけます。私はそのシーンを見た時点で両方で9人のパフォーマンスができるなと思いました。しかし、予選会場にいたのは二年生+黒澤姉妹のみで、果南、鞠莉、善子、花丸は学校で待機していました。
5人で間に合うなら9人でも間に合います。実際#3は9人の予選後に説明会に間に合っていますし、5人でなければいけない理由はなんだったのか私には疑問でした。
色々と考えてみて勝手に腑に落ちたのですが、逆だったのではないでしょうか。
『5人で間に合う』ではなくて 『5人が間に合わなかったら』。『9人で間に合う』ではなく『9人が間に合わなかったら』。9人の案は間に合わない時のリスクが大きすぎたんです。
千歌の頭の中で思い描いた本当にやりたかったプランは
- Aqours9人で予選に出場する。
- みかんのモノレールに乗り、学校の近くまで行く。
- そこから走って学校へ向かい、9人で説明会で歌う
というもの。
しかし、実際に千歌が取ったプランは
- 2年生+黒澤姉妹で予選に出場する。
- みかんのモノレールに乗り、学校の近くまで行く。
- そこから走って学校へ向かい、果南達4人と合流し説明会を9人で歌う
というもの。
この2つのプランの違いは、予選会場から学校へ向かう途中、アクシデントなどで間に合わなかった時に説明会のライブができるかどうかという点です。
最初のプランは、全て上手くいけば両方の会場で最高のパフォーマンスができる。しかし、一つでも上手くいかなければ説明会でパフォーマンスすることができない。逆に、実際に取ったプランは全て上手くいっても予選では最高のパフォーマンスはできないが、確実にライブ自体は行える。
千歌は失敗が許されないあの状況で間に合うかどうか不安で、保険をかけたのだと思います。
この『保険をかける』という行為から、千歌は
- 最悪の状況を考える『責任感』を持っていたこと
- プランを皆に言い出す『自信』を持てていないこと
が分かります。
自信が無くリーダーとして不完全な千歌は保険をかけるという間違った選択をしますが、Aqoursは最終的に最高の結果を掴み取っています。
何故千歌は間違った選択をしたのに、結果的には上手くいったのか。
その答えは果南と鞠莉にあります。
自信のなさを埋めるもの
#3の展開から、千歌が本当にやりたかったプランを取ることができれば全て上手くいくことが分かります。しかし、そのプランを言い出す『自信』が千歌にはありません。千歌に足りないものがある時、Aqoursは足りないものを補い合い、千歌を支えてきたはずです。
私は、千歌の『自信の無さ』を補ったのは果南と鞠莉の『決断性』だと考えました。
勘違いしないように!
やっぱり、私たちはひとつじゃなきゃね!
2年生以外はみかんのモノレールの存在を知りませんでした。その為、果南と鞠莉が『説明会に間に合う自信』を持つことはありません。
9人で歌いたかったけれど『絶対に間に合う』という自信がなく、5人と4人に分けた千歌の踏み出せなかった一歩分の距離。
その空白を、果南と鞠莉が学校で待機という指示を守らない決断をすることで埋めたのではないでしょうか。
(果南達が駆けつけた時に流れていた「素直になれなくて」は、千歌が心からやりたかったことを選べない素直になれなかった気持ちも表現しているのかな?なんてこじつけて考えていたりします)
千歌の2つのプランの違いは、予備予選の人数が5人か9人かという違いだけ。
果南と鞠莉が千歌の『自信の無さ』という壁を飛び越えたことで、結果的に千歌が本当にやりたかったプランと同じ状況になるのです。
その状況ができてしまえば、後は進むだけ。
そうして彼女たちは雨の中走り抜け、大きな『虹』と出会います。
『虹』と『自信の種』
私はこの『虹と出会えたこと』が千歌にとって大きなターニングポイントになったと思っています。
私思うんだ。
奇跡を最初から起こそうなんて人、居ないと思う。
ただ一生懸命、夢中になって何かをしようとしている。
何とかしたい、何かを変えたい。
それだけのことかもしれない!
Aqoursは抽選で1番を引くという奇跡を起こすことは出来ませんでした。
千歌は自信をもって意見を言えませんでした。
リーダーとして間違った保険をかけました。
しかし、千歌を含めたAqours全員があの時自分に出来る最善を一生懸命に追いかけた結果、あの日、あの場所に架かった『虹』と出会うことが出来て、最後には説明会に間に合うことが出来たんです。
だから、起こせるよ奇跡!
私たちにも!
だって、虹がかかったもん!
だからこその「起こせるよ奇跡!私たちにも!」なんだと思うんです。
奇跡を起こそうと動くのではなく、自分たちが心からやりたいことに全力を出し切ることができれば、それが奇跡に繋がるという事を千歌は知ったんです。
「だから、私たちは心からやりたいことをやろう。それが奇跡に繋がるんだ。」
千歌はこのように言っているんです。
自信が無く、心からやりたいことを言い出せなかった千歌は『虹』にたどり着く道を皆に示すことはできません。しかし、もし『自信』を持って自分からやりたいことをみんなに言うことが出来ていたら、千歌一人の力でも虹に辿り着く道を示すことができたんです。(あくまで道を示すだけであって、辿り着く為には皆の力が必要です)
この#3「虹」を通して千歌にとって一番重要だったのは、千歌が『自信』を持った先にこんな景色があるんだと知れたことだと思います。
千歌は現状の自分から『ひとつ先の景色』を知れたことで、『自信』へと繋がる『種』を手に入れました。
その種とは
『もし次に心からやりたいことができた時は、自信を持ってやりたいと言おう』
という、不安に対して前向きに向き合う『勇気』。
この勇気が、♯6で『自信』として芽吹くこととなるのです。
余談.よしまるをすこれ。
そして、少しだけ本題とはズレてしまいますが千歌推しのエモポイントをひとつ。
この一連の奇跡にまつわる全ての発端は、善子の24番の抽選くじです。
もし善子が24以外のくじを引いていたら、きっとあの虹を見ることはできていませんでした。
普段は運を貯めてるのよ!!!
善子が不運を被り、辛い思いや痛い思いをしながら貯めてきたはずの『善子の為の幸運』をAqoursのために使うと言える優しさ。
そして、あの場で誰も善子の事を信用しなかった中でただ一人、善子を信じてアシストした花丸の優しさ。
あの奇跡のはじまりは善子と花丸なんです。
千歌が手を差し伸べた花丸、千歌が優しく肯定した善子が、千歌の成長を促す虹の発端になっているかもしれないという事実が、私はただただ嬉しかったです。
#6『Aqours WAVE』から分かること
#8「HAKODATE」を見た後で改めて#6「Aqours WAVE」を見返した時に、色々と再考の余地がありました。
一度ミスをすると、立ち直すのは本当に難しい。
一歩間違えたら、私達もってこと?
#8のSaint Snowから分かるのは、一度のミス=ラブライブ敗退という事実です。
その事を意識した上で#6を見ていきます。
千歌は自分たちだけの輝きをカタチにする方法を探していました。そんな時に鞠莉、ダイヤがやろうと言い出したのは、果南が「センターの負担が大きい」と言うほどの振り付け。
ミスをすればラブライブで負けてしまう。失敗すれば廃校阻止を達成する前に、輝きを見つける前に、道が閉ざされてしまう。でもやりたい。
千歌が完璧にできれば最高の結果が待っている。しかし、本番で完璧を持ってこれるかは確実ではない。
この状況は#3とほぼ同じなんです。
しかし、『ほぼ』と言った通り確かな違いもあります。
その#3との違いとは、千歌が挑戦する『勇気』を持っていたことです。
千歌の成長
これはセンターを務める人の負担が大きいの。あの時は私だったけど、千歌にそれが出来るの?
大丈夫。やるよ、私。
できるかどうか確信はなかったはずの千歌ですが、ダイヤの提案を聞くなり皆の前で『やる!』と言います。『できるかどうかじゃない、やりたいかどうか』という言葉に従っていると言われればたしかにその通りですが、この言葉は『足を止める問題が自分の中にある場合』で、行動を起こして失敗しても重大な責任を負う必要が無い時に適応されてきたはずです。だから千歌は1期で心のままに進むことができていたんです。
しかし、2期は違います。
千歌の失敗が浦の星女学院を終わらせてしまうかもしれない。Aqoursの未来を閉ざしてしまうかもしれない。責任が千歌にのしかかります。この責任感と向き合えるだけの『何か』が千歌には必要だったんです。
#3までの千歌には『自信』も『勇気』もなかった。
だから言えなかった。
しかし、#6の千歌には責任感と向き合えるだけの『勇気』がある。
だから千歌はできるとは言えないまでも、やる!と言えるのです。
たくさんの『信じる気持ち』のカタチ
自信とは『自分』を『信じること』です。
何かを頑張り続けてきた時間。自分にしかない特技や個性。やり遂げてきた実績。何でもいいんです。これだけは信じられるというものがあれば自信を持つことができる。しかし、千歌は何もないと思っています。正確には自分だけの力では何も成し遂げていないと思っているのです。
2期♯7までのAqoursは、廃校を巡る問題の渦中です。彼女たちは廃校阻止という結果を追い求めざるを得ない。しかし、千歌はここで改めて目に見える『結果』だけではなく、自分だけの力で何かを成し遂げたいという『過程』にもこだわるのです。
ここが重要なポイントなんだと思います。
少し脱線しますが、高海千歌ってどんな子だと思いますか。
それこそ沢山答えがありますが、私は『他人の魅力によく気づく子』だと思います。
どんなに本人が『普通だ』、これは『捨てなければならない』と思っている個性だろうと関係ない。千歌の目には『特別』に見えるんです。だから千歌は皆を肯定するんです。
その考えの根底にあるのは『私こそが普通』という劣等感。
この劣等感は千歌を動かすアクセルにして、千歌を止めるブレーキにもなります。
千歌が心の奥底に隠しているブレーキと向き合うためには、その『普通という劣等感』を表に引きずり出し、浮き彫りにする必要がありました。
その役目は曜にはできません。梨子にもできません。
千歌に厳しい言葉を掛け、手を差し伸べないことができるのはAqoursの中では果南しかいません。
果南は1期♯9の過去の回想で、川に飛び込めない千歌に「今止めたら後悔するよ」という優しい『脅し』を与えます。♯6では「明日までに出来なければ諦めて」と『刻限』を与えます。
果南は千歌に『壁』を与えますが、直接千歌の手を引くことはしません。それこそが、果南なりの千歌を『信じる』気持ちの表れだと思います。
そうして果南の与えた『壁』にぶつかり、千歌は少しずつ自分の心のうちを外へ出していきます。
なんでだろ、なんでできないんだろ。梨子ちゃんも、曜ちゃんも、みんなこんなに応援してくれているのに…。やだ、いやだよ!私、何もしてないのに!何もできてないのに!
今まで成し遂げてきた結果は皆と掴んできたもので、自分一人の力で何かを掴んできたわけではないという想いから何もしていないと思ってしまう。
皆が私を支えてくれて応援してくれているのに、私は皆の為に何かできているのか?という想いから何もできていないと思ってしまう。
千歌ちゃん、今こうしてられるのは誰のお陰?
それは、学校の皆でしょ?
町の人たちに、曜ちゃん、梨子ちゃん、それに…
千歌が皆の力を借り、皆で何かを成し遂げる度に、千歌は自分ではなく皆への信頼を積み重ねていく。
信じるに値する『自分』があるのに、『普通』の劣等感から目を逸らしていて。自分から遠ざけていて。
そんな状態では、当然自信なんて持てるはずがないのです。
そもそも『普通』はそんなに悪いことでしょうか。平均、人並み。掛け算で言えば『1』だと思うのです。掛けて大きくはできないけど、小さくもしないから『普通』じゃないですか。しかし、千歌は自分の『普通』を0だと考えている節があります。
だから、曜と梨子は千歌に言葉をかけます。
今のAqoursができたのは誰のおかげ?
最初にやろうって言ったのは誰?
千歌ちゃんがいたから、私はスクールアイドルを始めた。
私もそう、皆だってそう。
他の誰でも、今のAqoursは作れなかった。
千歌ちゃんがいたから、今があるんだよ?
その事は忘れないで?
曜と梨子は教えたかったんです。
千歌の今までの時間は『0』じゃない。
千歌が信じられるものはちゃんと『有る』。
千歌の『何もしてないのに!』は違うんだよと。
自分の事を普通だと思っている人が、諦めずに挑み続ける。
それができるってすごいことよ?
凄い勇気が必要だと思う!
そんな千歌ちゃんだから、皆頑張ろうって思える!
Aqoursをやってみようって思えたんだよ?
恩返しなんて思わないで?
皆ワクワクしてるんだよ。
千歌ちゃんと一緒に、自分たちだけの輝きを見つけられるのを。
曜と梨子は伝えたかったんです。
千歌が『普通』だからこそ、千歌が振り絞る『勇気』は特別なんだ。
そんな千歌だから、私たちは一緒に頑張ろうと思えるんだ。
だから何もできてないなんて思わないで、『皆への恩返し』なんて思わないで、『自分の為』に飛んでよと。
そして一年生は千歌の成功を信じて自分たちの練習します。
その練習でできた傷が、『千歌ならきっとできるから、私達は自分の最善を尽くしているよ』と千歌に伝えているんです。
壁だったり、言葉だったり、傷だったり。
『信じる気持ち』のカタチは様々です。
それでも、皆の想いはひとつなんです。
「千歌自身が信じられなかった『これまでの時間』を、『普通』を、私たちは信じているんだよ。だから『自分』を『信じて』よ。」
皆はこの想いに、気づいてほしかったんですよね。
壁を飛び越える助走
私、あの頃の気持ちと変わってないよ。
それにこれが、ラストチャンスですわ。
あの時のAqoursを完成させたい!
やりたかったね、あれ。
私達で。
果南が二年前に置いてきた『気持ち』と『フォーメーション』。1期♯13のMIRAI TICKETで『気持ち』は取り戻せました。あとは『フォーメーション』だけ。
しかし、果南は言います。
ダメ、ダメだよ。
届かないものに手を伸ばそうとして、そのせいで誰かを傷つけて。
それを千歌たちに押し付けるなんて。
3年生の本当にやりたかったことは果南のフォーメーションで踊る事。
しかしそれを達成するためには、
- Aqoursが怪我を負うかもしれない練習をすること
- 千歌たちに自分のやりたいことを押し付けること
をしなければならないと思い、果南は『優しさ』からストップをかけます。
しかし、千歌は♯6の最後で言いますが、
目指したいこと
その素直な気持ちの中に、輝きはきっとある!
大切なのは『素直な気持ち』なんです。
誰かの為に飛ぼうとして失敗続きだった千歌も、今のAqoursの為にやりたいことを我慢しようとした果南も、『素直になれない人』でした。
けれど、千歌は1.2年生のお陰で自分と向き合うことができて、自分の素直な気持ちに従う『自信』を持つことができました。
誰かの為だけに飛ぼうとする気持ちの助走では失敗しても、そこに『自分の為に』も飛びたいという素直な気持ちを加えることで、大技の助走はより勢いを増します。
すると、果南の悩みなんて全部飛び越えてしまうんです。
果南がやりたいことを我慢する『壁』を千歌が全部飛び越えたことで、果南もまた本当の『素直な気持ち』をさらけ出すことができるのです。
千歌が飛ぶことを選んでくれて、逃げずに挑戦し続けてくれて。だから私も心からやりたいことができるんだ。
だからこその
ありがとう、千歌。
感謝の言葉なのではないでしょうか。
そしてこの言葉を言うのは千歌が踏み切る『前』。
このタイミングから、千歌が成功することを心から信じていることと、千歌が成功しようが失敗しようが、果南は『素直な気持ち』で千歌と向き合えることが分かります。
できるかな?の答え
素直になれていなかった果南、そして自信がなかった千歌には言えなかった言葉がありました。
でも、できることじゃない。
これはできないこと。
この時の果南には言えません。
『優しさ』で『素直なやりたい気持ち』を隠していたから。
千歌にそれができるの?!
大丈夫。やるよ、私。
この時の千歌にも言えません。
千歌にあったのは『自信』ではなく『勇気』だったから。
それでも、自分を信じることができた千歌なら、そして千歌を『優しさの壁』以上に信頼することができた果南なら、大きい声で叫べるんです。
できるかな?
できる!
この言葉を言えることこそ、千歌の『自信』の一番の証拠ではないでしょうか。
#12『光の海』から分かること
個人的に、千歌が抱えていた悩みは二つあったと思います。
ひとつは『誰のためのラブライブか』、もうひとつは『ラブライブ決勝後の自分』。
ひとつひとつ見ていきたいと思います。
一つ目の悩み:誰のためのラブライブ?
ラブライブで…優勝できますように。
ラブライブは去年で7236校がエントリーするほどの規模です。ということは7236通りの夢があって、かけがえのない時間があって、7235の敗北があったということ。
純粋な勝負の世界に、千歌たちが『学校の名前を残す』為の手段としてラブライブ優勝を掲げるのであれば、他校の『本気の夢』と向き合う必要がある。
私はそう思っていました。
しかし、千歌たちは自分たちのことで手一杯。
今こうしてラブライブ決勝に来れているのは、浦の星の皆の『願い』が『廃校阻止』という重りを吹き飛ばして、新しい目標をくれたから。#7で進めなかった千歌に新しい地図をくれたから。
皆のため、学校のために優勝して学校の名前を残すことが私たちに課せられた使命なんだ。私たちにしか出来ないことなんだ。
千歌は知らず知らずのうちに自分たちの気持ちではなく浦の星女学院の皆の気持ちを優先させてしまう。
また囚われてしまうのです。
しかし、浦の星女学院の絵馬には『Aqoursが優勝しますように』という願いばかり。
願いの主が『学校の名前を残す』なら、「浦の星女学院が永遠になりますように」とか、「名前を残せますように」という本心が書かれていてもいいと思うんです。
それでも、浦の星女学院はあくまで『Aqoursの優勝』を願っている。
元々#7を見た時点で少し違和感を感じましたが、#12のこのシーンを見て違和感の理由が分かりました。
その理由は、#7の浦女の皆の言葉が他力本願すぎるところ。
千歌たちだけじゃない私たちの為に!
学校の為に!
学校の名前を残してほしい!
千歌たちしかいないの!
千歌たちにしか、できないの!
しかし、閉校祭の企画立案やAqoursを会場で応援する姿などから、浦女の皆が他力本願でないことは分かります。
この矛盾に、違和感を感じていたんです。
確証もなければ説得力もないのですが、浦の星女学院の皆は諦めかけていたAqoursを見て『今のままは絶対にダメだ』、『なんとかしてAqoursに走り出してほしい』と嘘をついたのではないでしょうか。
優しい嘘
完璧なリーダーではない千歌が、存在自体がふわふわしている『輝き』を追い求めている最中もAqoursをまとめることが出来たのは何故か。
それは『μ'sのように廃校を救う』という明確な目標があったから。
μ'sとの違いを探し、自分たちだけの道を歩こうと決めたAqoursが出した答えは『0を1にしたい』という気持ち。これは廃校阻止へと続く第一歩。μ'sの背中を追うのをやめて、自分たちが今1番やりたいことを見つめ直して出した答えはやはり変わらず『廃校阻止』でした。
μ'sのように目指していたのは、輝いた人の跡を辿れば『輝き』にたどり着くという『見様見真似』からです。しかし1期♯6の最後で、千歌は心から『廃校を阻止したい』という気持ちに気づきます。♯11の浜辺で『心からやりたいことこそが輝き』だと気づきます。
千歌にとっての『輝き』は1期から2期♯6まで、ずっと廃校阻止なんです。
しかし、#7でタイムリミットが来てしまい、その目標は変えられない過去になってしまう。曜や果南が『廃校阻止の為じゃなく、輝きを探すためにスクールアイドルを始めたんだものね』と言っても方向転換出来ないほど。
『ラブライブなんてどうでもいい、学校を救いたい』。この言葉を言えてしまえるほど、千歌にとっては大切な目標だったんです。
そんな状態の千歌に「ラブライブに出て優勝して」と言っても、きっと伝わらない。
だから浦の星女学院の皆は「学校の為に、私達の為に」を強調していたのではないでしょうか。
本当はただ『心のままにラブライブに出場して輝いてほしい』だけだけれど、千歌が廃校阻止の呪縛から解かれることを願って、小さな嘘を混ぜたのではないでしょうか。
ラブライブで優勝してほしい!
千歌たちだけじゃない私たちの為に、学校の為に!
本心をAqoursに伝えるために、届けるために。
だから、だから、だから!
輝いて!!!
…まぁ妄想も甚だしいですが、千歌はそのお陰で前を向き、笑顔を見せ、また勢いよく走り出します。
これが、この時の最善。
超えられない壁はなくても、変えられない過去はある。
その過去に囚われて進めなくなるくらいなら、ちょっと嘘を吐いて視点を変えさせよう。
浦女の皆の『優しさ』が、千歌に絡みついていた廃校阻止の呪縛を解いた瞬間だと思います。
私なりの矛盾の違和感に、私なりの妄想で理由をつけてみました。
想いはひとつ
しかし、呪縛を解いた優しい嘘は、だんだんと千歌を縛る新たな呪縛へと変化していきます。『皆の願い』は『期待』となり、最後には千歌の素直な気持ちを挟む余地のないほどの『使命』へと変わってしまうのです。
その状態に異を唱えてくれたのは、Aqoursと同じ場所を目指し、函館では同じ舞台へ立った鹿角聖良。
勝ちたいですか?
誰の為の、ラブライブですか?
#10で浦の星女学院の事情を知り、浦女の生徒皆を『最高の仲間』と言ってくれる聖良だからこそ言える、重要な問いです。
その問いに千歌は答えることができません。
答えることができないということは、千歌に『学校の名前を残す』と同じくらいの『何か』理由があるということ。
その理由は『負けず嫌い』からも分かる通り、単純な勝利への欲なんだと思います。
しかし、皆のお陰で道しるべを見つけて立ち上がることができたのに、今更自分の欲のために勝ちたいなんて言えない。
全身全霊、自分たちの心に従って!
だから行くよ!迷わず心が輝く方へ!
素直な気持ちの先に、輝きはきっとある!
ずっと自分が叫んで実践してきたことを、この時の千歌はできなくなってしまう。
できることが増え、沢山のものを背負ったからこそ、またできないものが増えてしまうのです。
千歌ってとっても不器用な子だと思うんです。
コレ!って決めたら投げ出せなくなる子で、そこに諦めの悪さも乗っかって、雁字搦めで身動きが取れなくなる子。
そんな千歌が『決断性』を発揮させるには『責任感』が強すぎて。
自分のはじまりの気持ちに『自信』を持つには遠いところへ進み過ぎて。
だから原点に立ち返る必要があるんです。
千歌の「勝ちたい?」という質問に、皆は「勝ちたい!」と答えます。
もう一言ずつ添えて。
それが今、一番楽しいずら!
今は大好きな皆と一緒に歌えることが一番うれしい!
世界中のリトルデーモンたちに私の力を知らしめるためによ!
今をもっともっと楽しみたいから!
9人でこんなことできるなんて、なかなかないよ!
やっと一緒に出来たことだもん。
この道で良かったんだって証明したい!
やりたいことが前から変わらない人。
今の仲間たちとここまでやってこれたからこそ、新しくやりたいことが出来た人。
皆のやりたいことは様々です。
しかし、Aqoursの想いはひとつ。
『皆のためは勿論だけど、私たちは自分のために勝ちたいんだよ。それが何にも囚われない本当にやりたいことなんだよ。』
そう千歌に伝えているのです。
二つ目の問題:ラブライブ決勝後の自分
千歌の記憶に残っている『普通の日々』は、沢山の挑戦と挫折を繰り返し、傷つき、最後には挑戦もしなくなった時間です。
そんな千歌を変えてくれたのは『スクールアイドル』という有効期限付きの魔法。
外は普通なのに、学校の中は皆の夢で
明日に向いてワクワクしてて。
時が過ぎるのも忘れていて。
好きだな、そういうの。
ずっとこのままだったらいいのにね。
明日も、明後日もずーっと!
そしたら!そしたら…
ずっと輝けるのに、でしょうか。
千歌は『スクールアイドル』をやっている間は『普通』の自分でも変われることを知りました。けれど、皆が信じてくれた『普通』はスクールアイドルになってからのもの。ラブライブが終わり、夢が終わったその後はどうなるのか?
また何も無い『普通』に戻るのか?
千歌は時が過ぎるのも忘れるほど楽しい時間だったからこそ、必ずやってくる『終わり』が不安だったのではないでしょうか。
そんな千歌に曜がかけた言葉は
このまま、皆でお婆ちゃんになるまでやろっか!
という絶対に叶わない提案です。
曜は優しく「それはとても楽しいだろうし、私も心からやりたいけれど、絶対に叶わない願いなんだよ」と伝えているのだと思います。
千歌は笑顔でその言葉を受け入れ、進むべき今と向き合いました。
しかし、まだ気がかりがあったんです。
やれることを全部やり切り、それら全てを糧にしてラブライブへ羽ばたいて。
その結果、自分は輝きを掴めるだろうか。
輝きを掴めたらそれで私の物語は終わってしまうのではないか。
輝きを掴めなかったら今までの時間全てが無くなってしまうのではないか。
今までの時間が大切だったからこそ、未来に進むのが怖かったんだと思うのです。
だからいいんだよ?
いつもの千歌ちゃんで。
未来のことに臆病にならなくて、いいんだよ。
そんな千歌に、曜は「いつもの千歌ちゃんでいい」と言います。
昔の『普通』に苦しんできた時間も、今の『輝き』を追いかけてきた時間も見てきた曜だからこそ、その言葉は千歌に届くのではないでしょうか。
スクールアイドルを通して千歌が手に入れたものはなんでしょうか。
『勇気』か、それとも『自信』や『責任感』でしょうか。
私は『仲間』だと思うのです。
千歌がスクールアイドルを通して手に入れてきたもの、それらは全てあの9人でなければ掴めなかったもの。
そしてなにより、痛みや喜び、悲しみを分かち合ってきた絆があるんです。
それはスクールアイドルが終わってもなくなることはありません。
だから曜は笑顔で言うのです。
一人じゃないよ!
千歌ちゃんは!
その言葉を受けて、千歌は言います。
0を1にして、一歩一歩進んできて、そのままでいいんだよね?
普通で!怪獣で!今があるんだよね!
一歩一歩進んで、そのままでいいんです。
普通で、怪獣で。
無理に変えることなく、自分のペースで進んでいけばいいんです。
それが今を作っているのだから。
曜の想いを受け取った千歌は、未来への憶病さを乗り越えます。
皆の答えを受け取った千歌は、聖良の問いに答えを出します。
浦の星の皆の為、そして自分の為に叫ぶんです。
私も全力で勝ちたい!
勝って、輝きを見つけて見せる!
仲間と歩んだ千歌だからこそ、この決断性を見せることができたんだと思います。
Aqoursというグループ
千歌は沢山の出来事を経て、責任感、自信、決断性を手に入れました。
確かに一人ではできない事も多いです。
不完全ですし、未熟ですし。
けれど、だからこそ。
私は千歌ほどAqoursのリーダーとしてふさわしい子はいないと思います。
千歌は『足りない子』なんですよね。
だから『求める』。
その意思が前に進む原動力となる。
超えられない壁にぶつかる。
だから『皆が支える』。
千歌の足りない部分を補い、千歌も誰かの足りない部分を補う。
そうして千歌を中心に皆が繋がり、一つの輪ができる。
それがAqoursなんです。
それなら、最初に言っていた『私は"一応"リーダーの高海千歌!』の一応を否定できるのかという話になってきます。
できる!と言いたいのですが、私にはやっぱりできませんでした。
WATER BLUE NEW WORLD
その理由は『WATER BLUE NEW WORLD』にあります。
ミライへ向かおう!
私には、この並びが『渡り鳥』の群れの様に見えてしまいます。
この先頭は群れの方向を決めるリーダーの様に見えますが、先頭は頻繁に並びを変えるそうです。
私は、Aqoursもその通りだなと思うんです。
千歌はラブライブへ向かうリーダーとしてAqoursを導きます。
鞠莉は廃校阻止のリーダーとして理事長の仕事を一手に引き受け、皆を導きます。
ダイヤは浦の星女学院の生徒会長として学院の生徒を導きます。
函館ではルビィがSaint Aqours Snowを導きます。
Aqoursは千歌以外にも先頭で進む方向を決める力を持っていて、沢山のリーダー(やリーダー候補)がいるんです。
だから、私は千歌の"一応"を否定することはできません。
でも、それでもいいかなと思うんです。
千歌にリーダーの資格が無いのではなく、他にも沢山リーダーになれる仲間がいる。
だからこその『一応』なのかな、なんて考えれば。
私は"一応"リーダーの高海千歌!
この"一応"はネガティブな意味合いではなく、『私の仲間もすごいんだぞ!』というポジティブな意味合いに聞こえてきませんか。
それはすごく千歌ちゃん『らしく』ないですか。
私の幻聴だったら笑ってください。
結局14000字も書いて、考えた前と後で何にも変わりませんでした。
ちょっとオタクのこじらせが緩和しただけでしたね。
そんなわけで、千歌ちゃんと『リーダー』の話はこれにて終わり。
ここまでの長文を読んでいただき、本当にありがとうございました。
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