鬼滅の刃 第一話「残酷」 感想

鬼滅の刃一話を見た。

侍の時代「江戸」から文明が開化した「明治」、そしてそんな激動の変遷の波を超えた「大正」が今回の舞台。

主人公である炭焼きの少年炭治郎は、心優しく、鼻が利き、いつも家族の事や周りの人々のことを想える子。

沢山の妹や弟、そして母と、貧しくも心温まる日々を送っていた。

しかし、その日々は血の匂いと共に、唐突に終わりを告げる。

温かな日々を包んでいた深々とした白は、大切な命たちの赤で塗りつぶされていたのだ。

雪と孤独

積もった雪原。降りしきる雪のつぶ。ただの傍観者である自然は、この作品にはとても重要だ。

周りには足跡ひとつない画からは痛いほどの孤独が伝わってくる。

肌がジンジンと痛むほどの冷たさを感じる雪が温かな赤で染まっていく様は、痛いほどの絶望が伝わってくる。

ufoの背景、撮影技術はただ単に美しいだけではなく、その世界の無情な現実を描く。

いや、無情なのはその世界の人(鬼)で、世界はただそこにあるだけなのだが、絶望に飲み込まれていく炭治郎を無言で包み込んでいる美しい風景というところに、無情さを感じてしまうのだ。

鬼に家族を喰われた悲しみ。今まさに消えかけていく命の灯火を前にして何もできない無力さ。そして、どこへ向かえばいいのだろうか、妹が助かる保証はあるか、という漠然とした不安。

降り続く雪のつぶたちは、否が応でも過ぎていく時間を見せつける。

禰豆子の命のリミットまで、あとどれだけなのだろうか。

そんな時、不意に禰豆子が暴れだし、炭治郎は足を滑らせてしまう。禰豆子の美しい顔は、怒りのような、苦悶のような表情で歪んでいた。人ならざる牙、血走った目。彼女は「鬼」になっていた。

炭治郎に覆いかぶさり、今まさに喰わんとする禰豆子。炭治郎は涙を流しながら何度も頑張れと叫ぶ。

鬼と化した妹の人間の部分を信じるからこその「頑張れ」。

そして鬼の自分と人の自分の魂の戦いの最中に見える禰豆子の涙。

この人と鬼の境界線が、鬼滅の刃で描きたい大事なテーマのような気がした。

とはいえ炭治郎の絶対絶命に変わりはない。禰豆子の体は大きくなり、力も増していく。そんな時に現れた鬼切りの男、富岡義勇。

恐ろしく強い男の冷たい言葉は、炭治郎の心を抉っていく。

唐突に引きずり込まれた弱肉強食の世界では、優しさではなく武器を持たねばならないのだと、義勇は声を荒げる。

しかし、どうしようもないくらいその言葉には優しさが溢れているように感じた。

お前ごと貫いてもよかったんだぞ。

そんなことを言いつつ、義勇は貫かなかったわけで。

武器だけでなく、優しさも持っているわけで。

鬼という人外を殺すためには自分も人を辞めなければならないわけではない事を、富岡義勇が証明しているように思えてならないのだ。

炭治郎は禰豆子が人を喰ったか喰っていないかという判断を『感情』ではなく禰豆子の口と手に血がついていないという『状況証拠』で下したわけだけども、義勇は逆に炭治郎を守ろうとする禰豆子の行動、自分への威嚇から禰豆子の『人の心』を感じ取り、刀から手刀に切り替える。

普通は逆だと思うのだ。

義勇も言っているが、『情』に流されるほど人は危険にさらされる。ならば血縁の炭治郎ほど禰豆子の心を感じ危険な選択肢を取ってしまうだろうし、鬼殺しの義勇ほど状況証拠で動くはず。

しかしそうはならないところが、この一話で特に好きな部分だ。

炭治郎にはクレバーな部分、キラリと光る戦闘センスがあり、義勇には”鬼”という人外になりかけているモノの心を読み取る心がある。

これから先、この兄妹には多くの困難が付きまとうだろう。けれど、鬼殺しがハッとするほどの戦闘センスと、苛烈だが確かな優しさを持つ協力者と、鬼の欲に負けなかった禰豆子の心があれば、きっと乗り越えていける…と思いたい。

まぁ良い人間もいれば鬼よりも悪い人間もいるだろうし、鬼にも一癖も二癖もある奴らが居そうだし、そう簡単にはいかないとも思うけれど。

まとめ

血の匂いをまき散らしながら、幸せな時間を壊し貪り喰う鬼。

それらに奪われた大切なものの敵を討つべく、炭治郎は『鬼滅の刃』を握るのか。

それとも、これ以上大切なものを奪われぬよう守るべく、炭治郎は『鬼滅の刃』を握るのか。

 

陽と陰、白と赤、人と鬼。

足元の曖昧な境界線を綱渡りで。

だけど妹を握るその手は力強く。

 

炭治郎が選んでいく選択と答えを、僕もしっかりと見ていきたい。

次の話もめちゃくちゃ楽しみだ。

 

以下、モニョモニョと呟いたツイート。

 

 

 

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ちなみに今回の話で一番好きなカット。

しっかりと繋がれた『家族を埋葬し、あかぎれた炭治郎の手』と『血のついていない、けれど鋭い爪の禰豆子の手』。

 

いつか二人が幸せに笑いあえる未来が来ますように。